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- カテゴリ: 第796号(2015年12月13日発行)
- 2015年12月13日(日曜)09:00に公開
- 作者: 戸田 照朗
自主夜間中学の30年つづる
松戸市に夜間中学校をつくる市民の会が記念誌
「新たな出発(たびだち)の今(とき) 松戸自主夜間中学校の30年」(松戸市に夜間中学校をつくる市民の会編・桐書房)=写真=がこのほど発行され、7日、同会の代表らが本郷谷健次市長と伊藤純一教育長に50冊を献本した。
同会は1983年4月に発足。以来33年間、「松戸市は市の責任において一日も早く夜間中学を開設せよ」と一貫して訴えてきた。
また同会は、人が人として生きるための人権としての「教育への権利」をほかならない市民が実質的に保証していこうと、「松戸自主夜間中学校(以下、自主夜中)」を開講。毎週火曜と金曜の夜、勤労会館で授業を行っている。現在、開講回数は2750回を超え、生徒は延べ1600人、スタッフは400人を超えている。
自主夜中は開講当初から、年齢、性別、国籍、学歴その他一切を問わない、学びたいという気持ちだけを入学条件とし、「来るもの拒まず、去るもの追わず」「教えるものと教えられるもの隔てなく」などを基本原則として運営してきた。
こうしたオープンな雰囲気のためか、開講してしばらくは、戦中・戦後の混乱期に義務教育を受けられなかった人や在日韓国・朝鮮人のオモニやハルモニ、中国残留帰国者などが多く学びに来ていたが、ほかに登校拒否をしている中学生や、学校にはほとんど通わなかったのに、卒業証書は手にしている「形式卒業者」といわれる若者、障がいのある人たち、外国籍の人たちも、かなり早いころから来ていたという。
また、結婚や就職など、新たな変化を迎えた人をみんなで祝う「出発(たびだち)の会」や、「北斗祭」という文化祭など、多くの行事を行っている。
同書には、自主夜中に通った様々な生徒やスタッフの思い、夜間中学開設運動の経緯などがつづられている。
同会の活動や運営は生徒やスタッフ、会員が意見を出し合い、議論した上での合意を基に行われている。
同会の榎本博次理事長は「自主夜中は多くの生徒さんやスタッフが力を合わせて作り上げてきたものです。だからこそ、お互いがお互いを信頼し合える学びの場となり、33年もの長期間にわたって開講し続けてこられたのではないかと思います」と書いている。
公立夜間中学開設については、長い間大きな動きがなかったが、ここ数年は状況が変わってきている。
夜間中学を全国に設置して「多様な教育機会の確保」を目的として立法しようとする超党派の国会議員連盟ができているほか、文部科学省も形式卒業者の学び直しの場として夜間中学を積極的に活用するという動きを見せている。こうしたことを受けて、札幌や仙台などで、夜間中学開設の具体的な動きが出ているという。
伊藤教育長は「来年度の予算取りなど、まだ不明確なので、はっきりとは申せません。しかし、私が教育委員会に入った14~15年前に特別支援という新しい教育の考え方が始まりました。(教育改革案には)特別支援には障がい者という対象だけではなく、もっと幅の広い特別な支援を必要とする子たちのためのあり方を、という表現をした記憶があります。この間の大きな成果としてフリースクールや夜間中学がやっと具体的になりつつあるのかな、と私自身は感じています。是非準備を始めたいと思っているところです」と話した。