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- カテゴリ: 第817号(2017年9月24日発行)
- 2017年9月24日(日曜)09:00に公開
- 作者: 戸田 照朗
市民が石造物2040基を調査
「松戸市 石造物遺産」出版
松戸史跡マップ研究会が出版企画した「松戸市 石造物遺産 ふるさと史跡を探訪」(万葉舎)が刊行された。同書はA4版688頁、税込3500円。市内2040基の石造物が神社、寺院、路傍別に地域ごとに写真入りで紹介されている。
同会は、平成13年に公民館の成人講座「仲間とふるさと松戸の史跡マップを作ろう」を受講した人たちが、講座終了後に有志で立ち上げた団体。月に1~2回、近郊市域の史跡見学会、史跡・遺跡などの文化財調査、年に1回の市民向けの史跡巡りなどを行っている。現在の会員は15人。
創設した会員は、市内の史跡を巡る17コースを考え、16年には史跡案内書も完成した。新入会員や市民を案内し、石造物について説明する場合は、昭和60年から63年にかけて松戸市文化ホール(現市立博物館)が発行した「松戸市内石造文化財所在調査概報」という3冊の調査報告書を参考にしていたが、発行から30年以上が経ち、現況や内容の違いを指摘されることもあり、同会の中で再調査の話が持ち上がった。
調査は、20年4月から会員を5班に分けて開始され、24年3月には矢切・栗山地区の調査内容がまとめられ、製本して会員に配られた。しかし、各班の進捗状況や、調査内容の濃淡がまちまちで、残る地域の調査をどうしていくかが課題となった。そこで、24年4月からは入谷雄二さんを調査委員長に有志10人前後の1班体制で調査を進めることになった。入谷さんは、石造物の種類、寸法、銘文や、像容、持物などの特徴を記載する「調査カード」を考案。神社などの境内で各人が石造物を調査し、現地で全員で読み合せをして内容を確認した。調査は月に1~2回、1日に平均40基を調査した。現地で読めなかった銘文などは写真を撮り、入谷さんが自宅で辞書に照らし合わせながら判読し、後日、会員に解説した。こうした学びが会員の興味とやる気を持続させたという。
調査は4年間をかけて昨年2月に終了。昭和60年代の市の「調査概報」では、1749基が調査されたが、同会では276基多い2025基を調査した。市が調査した1749基のうち、42基が処分されており、108基は所在不明で調査できなかった。同会は新たに426基を「発見」し、調査した。同書には報告書作成後に追加調査した15基を加え、2040基が掲載されている。
幸谷観音で知られる福昌寺の寛永2年(1625)の庚申塔、東漸寺の元和9年(1623)の石灯籠、萬満寺の延宝3年(1680)の隔夜念仏塔は県内で最古、小山の浅間神社の寛政7年(1795)の旧石鳥居は、江戸の字彫りの名人とされる栗屋勘兵エの名前が刻まれた石造物としては県内で最古だという。同会では、福昌寺、松戸史談会、小金の緑と文化財を守る会と共同で、福昌寺の寛永2年の庚申塔を市指定有形文化財に指定するよう申請している。
同会の調査では、松戸市の石造物をデータベース化することを目的としており、当初は出版を考えていなかったが、溝渕碩治会長の知り合いの出版社が興味を示し、出版することになった。
同書では、松戸市を61地域に分け、地域の寺社や路傍の石造物の位置を示している。また、神社や寺院、石造物についてのコラムも掲載し、石造物を知る上での入門書的なつくりになっている。同調査により松戸市における石造物の保全と石造文化財研究資料として後に続く人たちの研究材料に供すれば、という願いもあるという。
問い合わせは、電話 047・387・3902溝渕会長まで。