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- カテゴリ: 日曜日に観たいこの一本バックナンバー
- 2014年3月23日(日曜)09:00に公開
- 作者: 戸田 照朗
日曜日に観たいこの一本
クロニクル
田舎町の高校生、アンドリュー、マット、スティーブの3人は、パーティの夜に洞窟を見つける。その中にあった光る謎の物体。その物体に影響されたのか、3人は不思議な力を手に入れる。念じるだけで物を動かすことができる力、テレキネシス(念動力)だ。最初は小さなものを浮かせる程度の力だったが、徐々に力は強まり、自分の体を浮かせて空を自由に飛んだり、自動車をスクラップにするほど強くなっていく。
アンドリューは小柄で目立たない少年。家には病気の母と、無職で酒ばかり飲んでいる暴力父がいる。しかし、3人の中で一番強い力を得たのはアンドリューだった。
様々な問題を抱えながらも、マットやスティーブという友達を得たアンドリューの学園生活はそれなりに楽しそうだ。特に「力」を得て、空中でフットボールを楽しむ姿は夢のよう。
しかし、あることをきっかけに物語は暗転してゆく。自分の容姿や家庭環境から大きなコンプレックスを抱えていたであろうアンドリューが、最も大きな「力」を持つことになったことが悲劇の始まりである。少年の心に巣食ったコンプレックスはひとたび目を覚ますと手がつけられない怪物のようだ。それは、大きなプライドの裏返しでもある。アンドリューは、本当は病気の母を気遣う優しい少年だが、マットやスティーブの忠告も耳に入らなくなってしまう。
ストーリーは「キャリー」(スティーブン・キング)と「AKIRA」(大友克洋)を思わせるような内容だった。どこにでもありそうな平凡な学園ドラマから一転するあたりは「キャリー」、コンプレックスを抱えた少年が最も大きな「力」を手にするところは「AKIRA」の鉄雄を思わせる。ストーリーに目新しさはないが、人間ドラマがベースになっているせいか、最後まで見てしまう。
アンドリューは最初、自分の生活を録画するためにビデオカメラを持って登場する。「クローバーフィールド」のようにずっとカメラ視点にこだわるのかと思ったが、そうでもなかった。この点、ちょっと中途半端な感じがして残念。
監督=ジョシュ・トランク/出演=デイン・デハーン、アレックス・ラッセル、マイケル・B・ジョーダン/2012年、アメリカ
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