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- カテゴリ: 日曜日に観たいこの一本バックナンバー
- 2015年5月24日(日曜)09:00に公開
- 作者: 戸田 照朗
日曜日に観たいこの一本
インターステラー
近未来、毎日のように襲ってくる砂嵐が人々を苦しめていた。地球の環境が激変し、農作物が育たなくなっていた。クーパーはNASAの宇宙飛行士だったが、食糧生産が第一の社会となり、今は農場でトウモロコシを作っている。
クーパーは農場の中に建つ家で義父と15歳の息子トム、10歳の娘マーフと暮らしている。科学技術が否定的に見られる社会風潮の中、妻は腫瘍を発見するのが遅れ、数年前に死亡した。
マーフは父に似て科学好きの女の子。そのマーフが「書斎に幽霊がいる」と妙なことを言うようになった。本が自然に落下したり、砂に模様のようなものが出たり。父娘はこれが重力波を使った何者かからのメッセージだと気づき、導かれるように、とある施設にたどり着く。
その施設は廃止されたはずのNASAだった。政府は秘密裏にラザロ計画という他の惑星への人類移住計画を進行中だった。48年前に土星の近くに何者かによってワームホールが作られた。そのワームホールを使って別の銀河に行き、人類が住めそうな惑星を探査しているという。既に3つの惑星が候補として挙がっており、その探査に宇宙飛行士としてのクーパーの力を貸して欲しいと頼まれたのだった。
滅亡にひんした人類を救うために宇宙を旅する…といえば、「宇宙戦艦ヤマト」を思い出す。ヤマトはワープ航法で人工的に作ったワームホールを通って光速を超え、別の銀河系にあるイスカンダル星に行って、1年後地球に戻り、提供された放射能除去装置で人類を救った。
実はヤマトの旅には不自然な点がある。その最大のものが「時間」だ。
高速で移動したり、巨大な重力が働く場所では時空がゆがみ、時間がゆっくり流れる。宇宙旅行で、アインシュタインの相対性理論は現実の話なのだ。
地球を高速で周回している人工衛星は定期的に時計を修正しているという。そうしないと、地球時間とずれてしまうからだ。何日か国際宇宙ステーションにいた山崎直子さんは、ほんの少しだが地球にいるよりも年をとるのが遅れたはずだ。
つまり、1年もかけて宇宙を旅したヤマトが帰った時には、とっくの昔に人類が滅亡していたということが起こりうる。
今回紹介した作品では、そのへんが実にリアルに、切なく描かれている。
候補の1つになっている水の惑星は、超大質量ブラックホール・ガルガンチュアの周りを公転しており、この惑星の1時間は地球の7年間に相当する。
宇宙に行くことに反対していた娘のマーフには「必ず戻る」と約束して出てきたが、気まずいまま別れてしまった。クーパーが宇宙の彼方で奮闘している間にも、地球にいる娘はどんどん年をとってしまう。
この物語は、時空を超えた父娘の愛情の物語でもある。
宇宙物理学の用語も出てくるので、ムズカシイと思われる方もいるかもしれないが、人類が宇宙旅行をするようになれば、現実にありうる話だと思って見ていただきたい。私はこういう話が大好物。「2001年宇宙の旅」「猿の惑星」(旧作)など本格的なSFが好きな人にはオススメだ。
監督=クリストファー・ノーラン/出演=マシュー・マコノヒー、アン・ハサウェイ、ジェシカ・チャステイン、エレン・バースティン/2014年、アメリカ・イギリス
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「インターステラー」ブルーレイ&DVDセット(3枚組/デジタルコピー付)税別3790円、発売・販売元=ワーナー・ブラザース・ホームエンターテイメント