レ・ミゼラブル:DVDジャケットの写真

日曜日に観たいこの一本

レ・ミゼラブル

 今までに何度も映画や舞台になったヴィクトル・ユーゴー原作の作品なので、ストーリーはご存知の方も多いかと思う。

 わずかパン1個を盗んだ罪で19年間投獄されたジャン・バルジャンは、仮出獄するが、生活に行き詰って再び盗みを働いてしまう。逃げ込んだ修道院で司教の慈悲に触れたバルジャンは、改心し、過去を隠して市長にまで上り詰め、工場を経営する町の名士となっていた。その工場で働いていたファンテーヌという貧しい女性はバルジャンの知らないところで、不当に解雇されていた。生活に困窮したファンテーヌは、売春宿に身を落としてしてしまう。知らなかったとはいえ、母娘を不幸にしてしまったバルジャンは、娘のコゼットを引き取って育て、罪を償おうとするが、刑務所からバルジャンの行方を執拗に追いかけてきたジャベールに目をつけられてしまう。その頃、パリの若者の間では革命の機運が高まっていた。

 劇場公開されたころから、非常に評価が高かったので、注目していた。特に、芸能関係の方が絶賛していたと思う。

 しかし、ちょっとした懸念もあった。というのも、この作品がミュージカルだからだ。私は、どうもミュージカルというものが苦手。登場人物が、何の脈絡もなくいきなり歌いだすというのに、なじめない。そういうものだ、と理解してしまえばいいのだろうが、どうもいきなり歌いだす登場人物が滑稽に見えてしまう。

 この「レ・ミゼラブル」でも、「オイオイ、こんな深刻な時に、歌ってる場合じゃないだろう」などと、つい思ってしまう。

 

レ・ミゼラブルの写真

 びっくりしたのは、この作品では、ちょっとしたセリフでもみんな節がついているということ。普通にしゃべっているセリフはほとんどない。

 ミュージカル映画の中で、唯一好きな作品がある。「ブルース・ブラザーズ」だ。

 この作品はご存じの通り、コメディ。登場人物がいきなり歌い始めても、踊り始めてもいいのだ。もともと「滑稽」なのだから。

 反対に、「ダンサー・イン・ザ・ダーク」には怒りさえ感じた。少しずつ目を病んでゆく主人公(ビョーク)が、周りの親切に背を向けて、不幸な道にまい進してゆく。そして、歌い、踊るのである。この作品の場合は、ミュージカルだからというよりは、ストーリーに問題があったのかもしれないが。

 話が少し逸れたが、「レ・ミゼラブル」が芸能関係の方に高い評価を受けたのは理解できる気がする。この映画は演じる側、作る側からすれば、大変な苦労だっただろうと思う。役者にしても、普通にセリフを話すのと、歌うのでは感情の込め方が違うだろう。しかし、私はやはり入り込めなかった。唯一の例外は、ファンテーヌ(アン・ハサウエィ)が最期に歌うシーンである。

 この作品では、今までの「レ・ミゼラブル」よりも、若者の「革命」に大きな比重が置かれている感じがした。考えてみれば、バルジャンがパン1個を盗んだだけで、しかも妹のために盗んだという情状酌量の余地があるのに19年間も投獄されたというのは、どれだけ当時のフランスが病んでいたのかと思う。ただ、その社会的背景がよくわからなかったのが、少し残念な気がした。
【戸田 照朗】

 監督=トム・フーバー/出演=ヒュー・ジャックマン、ラッセル・クロウ、アン・ハサウエィ、アマンダ・セイフライド、エディ・レッドメイン、ヘレナ・ボナム=カーター、サシャ・バロン・コーエン、サマンサ・バークス、アーロン・トヴェイト、イザベラ・アレン/2012年、イギリス

「レ・ミゼラブル」DVD

発売元・販売元:ジェネオン・ユニバーサル・エンターテイメント

発売日:6月21日

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