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- カテゴリ: 第773号(2014年1月26日発行)
- 2014年1月26日(日曜)09:00に公開
- 作者: 戸田 照明
きょう高校演劇南関東大会
県松、専松 全国に挑む
きょう26日、富士市民文化会館ロゼシアター中ホールで行われる高校演劇南関東大会に県立松戸高校と専修大学松戸高校が出場する。
昨秋行われたブロック大会を勝ち抜いた両校は、昨年11月の県大会でも優勝、準優勝となり南関東大会への出場権を獲得した。
松戸の高校が千葉県代表として出場するのは10年連続。松戸勢2校が関東にすすむのは4回目となる。全国大会に出場経験のある強豪・県立松戸馬橋高校はブロック大会で3位だった。南関東大会は千葉、茨城、東京、山梨、神奈川、静岡の代表13校によって行われ、1校ないし2校が全国大会に出場する。
演技力で心の救済描く
県立松戸高校
県立松戸高校が上演するのは、越智優・作『サチとヒカリ』。
卒業が危ぶまれるちょっと不良のサチとヒカリが、福山先生の提案で相談室の相談員に任命される。最初は嫌々やっていた二人だったが、いろんな生徒の相談を受けていくうちに、心の中に変化が生まれ、最後は福山先生を思いやれるまでになっていく。
同校は県内で唯一、教科に演劇を採用している。演劇科主任の見上裕昭教諭(58)は、「言葉(セリフ)の一つひとつがデリケートで、単なる言葉の意味だけではなくデリケートなやりとりが続く。間(ま)の中にある温かい気持ちを表現しなければならない。平板な台本で地味なだけに、難しい芝居」と話す。
演劇部顧問の小室秀一教諭(57)は「普通、生徒がカウンセラーになることはありえない話で、荒唐無稽なことだが、妙な説得力がある。心の救済がテーマ。生徒たちも台本の面白さを感じているようです」という。
練習を取材したが、まず目を引くのは相談室を舞台に再現した見事な舞台装置。そして、役者たちの演技が主役から脇役に至るまで、ムラなくうまい。効果音や照明は最小限で、それだけに、役者の演技だけで見せていく。
福山先生役を演じた杉山朱里さん(2年)は、「ここまで来るのに、指導してくれた先生や先輩、そして部員一人ひとりの頑張りがこういう結果に結びついたのがすごく嬉しい。人間味のある先生の役。どうしても早口になってしまい、ゆっくり間をとるのが難しかった。本番まで小室先生の演出を聞いて、つめていきたい」。
相談に来る生徒役で舞台監督、部長も務める本多千月香( ちづか)さん(同)は、「自分なりに苦労があったが、上下関係なく一人ひとりが自分の仕事をやるよう意識してくれた。いろんな人が支えてくれた結果が関東出場。大人しくて地味な子で、今までにはなかった役。自分の中で必死にもがいている。サチとヒカリとの対照的な心を出して行けたら」。
サチ役で副部長の青柳幸歩さん(同)は、「サチは自分と共通するところがあり、今までの役の中で一番合っていると思う。見かけの変化だけではなくて、心から変わっていくサチの心の変わり具合を表現するのが難しかった。全国に行くためには日頃の稽古が大切。生活面もしっかりして、部長をサポートできたら」。
父娘の気持ち 創作劇で
専修大学松戸高校
専修大学松戸高校が上演するのは浅田太郎とおちゃめな専松演劇部・作『人生ゲーム』。同校は毎年オリジナルの創作劇で挑むが、今年も顧問の浅田太郎教諭(39)の実体験をもとに書かれた台本だ。
学校で人生ゲームをして遊んでいる4人の女子生徒。ゲームの中の人生は上がったり下がったり、浮き沈みが激しく、たわいのない会話を楽しみながらゲームを続けていた。主人公のあやかは、幼い頃に父親を交通事故で亡くし、母子家庭で育った。ゲームの最中、なぜかあやかの父親が女子生徒の一人に乗り移ってしまう。しかし、あやかは気がつかない。友達のおかしな言動に気がついたのは、ほかの2人の女子生徒だった。
この話は、浅田教諭が交通事故に遭った時の体験がもとになっている。薄れゆく意識の中で、「今死んだら、娘に会えなくなってしまう」と考えていたという。
あやかには父親の記憶がほとんどなく、女子生徒に憑依(ひょうい)した父親の霊は、見ることができなかった娘の成長を想い、何を伝えるべきかと悩む。前半の明るく元気な展開から、後半は二人の気持ちのやり取りが見所に。
高校演劇では、男子部員が少ない。男子の有無で芝居の幅も変わるという。今年の専大松戸にも男子部員がいない。「男子が女子の格好をすれば、笑いがとれるが、その逆はない。そこで、女が男になる話を考えた」と浅田教諭。浅田教諭の父親としての気持ちに、生徒たちの娘としての気持ちを加味して台本は作られた。
舞台の真ん中には回転する大きな人生ゲームのセットがある。ブロック大会では、回転しないセットだったが、馬橋高校の土田峰人教諭のアドバイスもあり、ルーレットのように回転するセットに改良したという。県大会では、舞台美術賞と創作脚本賞も受賞している。
演出の鎌田直子さん(2年)は、「ずばぬけて演技がうまいという人はいなくて、むしろ下手です。でも、個々人の力というより、みんなのチームワークで、専松演劇部というチームでやってきた。ブロック大会、県と、これで最後になっても後悔しないように、全力でやりました。関東でも悔いのない舞台にしようと、みんなで話しています」。
あやか役の鈴木えりかさん(同)は、「あやかとは家庭環境が違うので、どういう気持ちかわからず、最初は難しかった。でも、文化祭、地区、県と今回が4回目の上演で、少しずつ気持ちも分かってきた気がします。ここまで来れたことがうれしい。手伝いに来てくれた先輩、後輩(中学生)、先生への感謝を込めて頑張りたい。今までの成果をおもいっきり発揮して、みんなで一つになって全国を目指したい」。