あなたを抱きしめる日まで:DVDジャケットの写真

日曜日に観たいこの一本

あなたを抱きしめる日まで

 実話の映画化。

 主婦フィロミナは娘のジェーンにずっと言えなかった秘密を打ち明ける。1952年、10代の娘だったフィロミナは妊娠してしまい、父親にアイルランドの修道院に入れられた。その修道院には、ほかにも未婚の母となった娘たちが多数収用されており、みな奴隷的な労働をさせられていた。修道院を出るためには、多額のお金がいる。修道院で産んだわが子には1日に1時間しか会わせてもらえず、みなそれだけを心の支えに労働を続けていた。フィロミナの息子アンソニーが3歳になった時、お金持ちがやってきて、息子を養子として連れていってしまった。強制的か、半強制的か、フィロミナは子どもの親権を放棄させられていた。

 母の話を聞いたジェーンは心を痛め、BBCを辞めてフリーになっていた記者・マーティンに相談。フィロミナとともに取材とアンソニーの消息探しの旅が始まる。

 とても深刻で哀しい話なのだが、ラブロマンス好きで、人がいいフィロミナの性格が作品を明るくしている。面白いのは、あんなに酷い目にあったというのに、フィロミナは信仰心を捨てていないということ。対して、マーティンは「私は神を信じない」と公言してはばからない。

 

あなたを抱きしめる日までの写真

 西洋の世界で神を信じないと公言することは、かなり勇気のいることではないのだろうか。それにしても、修道院のシスターたちの行為は酷すぎる。人権侵害もはなはだしい。未婚の母になることが、そんなに罪なのか。セックスをしたことが罪なのか。キリストは処女のマリアから生まれたかもしれないが、シスター、あなたは性交した親から生まれてきたんでしょ? と問いたくなる。

 最近観た作品で、「プリズナーズ」という作品がある。映画的にはよく出来ているのだが、「日曜日には観たくないなぁ」と思い、紹介をしなかった。この作品の根底にもキリスト教が横たわっているように思う。

 私たちは好むと好まざるとにかかわらず、西洋文明の影響下にある。そして、その西洋に大きな影響を与えているのがキリスト教だ。だから、こういった作品で、西洋社会の一端を垣間見ることには、それなりの意義があると思う。

 少々、話が小難しくなってしまったが、50年前に別れた息子を想うフィロミナの心にはだれもが共感するだろう。

 監督=スティーヴン・フリアーズ/出演=ジュディ・デンチ、スティーヴ・クーガン/2013年、イギリス
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 「あなたを抱きしめる日まで」、DVD3900円(税別)、発売元=ファントム・フィルム、販売元=ハピネット