ビリギャル:DVDジャケットの写真

日曜日に観たいこの一本

映画「ビリギャル」

偏差値30で学年ビリだった女の子が猛勉強して、現役で慶應大学に受かったというお話。実話を元にした原作本があるというが、どこまでが実話でどの程度フィクションなのかは分からない。

なんとなく軽そうなタイトルとジャケットから見るのを少々迷ったが、見てみるとなかなか面白かった。

主人公の少女・工藤さやか(有村架純)は塾講師の坪田義孝(伊藤淳史)に出会うことで学ぶことの楽しさに目覚め、自分の可能性を信じられるようになっていく。そのきっかけを作ってくれたのは、「あーちゃん」こと母親のあかり(吉田羊)だった。この、あーちゃんが本当にいい。あーちゃんは、教育ママというわけではない。とにかく、娘がのびのびと充実した人生を送れるようにと、娘の幸せだけを考えてくれる人。

だが、家庭はあまりうまくいっていない。父親の徹(田中哲司)は、プロ野球選手を目指している弟ばかりを可愛がり、さやかとさやかの妹まゆみの姉妹には関心がない。それだけではなく、さやかには酷い言葉を浴びせる。だから、あーちゃんは夫の稼ぎに頼らず、パートに出て、さやかが塾に行くお金を稼ぐのだ。受験というだけではなく、この家庭内の不和が物語に奥行を出している。

さやかは高校の教師にも侮られ、酷い言葉を投げつけられる。それに対して塾講師の坪田は笑えるほど真逆な対応をする。0点の答案を見ても、何かしら良いところを見つけ出してほめる。とにかく、ほめる。

母と父の違い。学校の先生と塾の先生との違い。この二つの対立軸も物語の柱になっている。

 

ビリギャルの写真

夜中に家の前で家族同士が激しく言い合うシーン。暗くて目立たないが、小さな妹の瞳が光ったのに気がついた。幼い子役(奥田こころ)の心にも迫るものがあったのだろう。それだけ出演者が緊迫した現場を作り出していたのだと思う。

いろんな意味で、自分の高校時代、予備校で受験勉強をしていた頃を思い出した。

父や母もまだ若く、何かともめ事があった。バカにした教師をいつか見返してやろうと思っていた。受験勉強のきっかけなんてなんでもいい。その反発心がガソリンになる。合格判定がギリギリの模試の結果を握りしめて不安になった。受験のために東京に行く前に、使い込んだ参考書の表紙に予備校の先生のサインをもらった。この作品のいろんな場面が思い出と重なった。

監督=土井裕泰/出演=有村架純、伊藤淳史、吉田羊、田中哲司、野村周平、奥田こころ/2015年、日本

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映画「ビリギャル」DVDスタンダード・エディション、発売元=TBS、販売元=東宝、発売中、税別3500円