海街diary:DVDジャケットの写真

日曜日に観たいこの一本

海街diary

原作は漫画らしいのだが未読である。

こういう大きな変化のない日常を、気持ちよく、飽きさせず見せていくというのは本当に難しいと思うのだが、終わるのが惜しいというか、もっとずっと見ていたくなるような作品だった。

鎌倉の古民家で暮らす三姉妹のもとに離れて暮らしていた父の訃報が届く。山の中の温泉地で生涯を終えた父は、姉妹を残して母とは違う女性と暮らしていた。葬儀で出会った腹違いの末娘すずと初めて会った三姉妹は、鎌倉で一緒に暮らすことを提案する。

しっかり者で、親代わりとなってきた長女・香田幸(綾瀬はるか)。いまひとつ男を見る目がない次女・佳乃(長澤まさみ)はいつも幸と口げんかをしている。三女の千佳(夏帆)はマイペース。この3人の生活に中学生の末娘・浅野すず(広瀬すず)が加わって四姉妹の生活が始まる。

ダメで優しかった父は、女性にはもてたらしく、すずは生母が他界した後、父の3人目の妻(継母)と暮らしていた。自分の生母は姉たちから父を奪った女。一緒に暮らしている継母とは血がつながらない。自分はどこにいたらいいのか。すずの孤独を優しい姉たちが包んでいく。

4人の娘に共通するのは「父の思い出」。同じ思い出があるわけではない。でも、葬儀の後、父が好きだったという山の中の丘に案内してもらった三姉妹は、山の中なのに、どこか鎌倉の風景に似ていることに気が付く。前半に出てくるこのシーンで、心をギュッとつかまれてしまった。

 

海街diaryの写真

幸は離婚後、家を出てしまった母(大竹しのぶ)には、いまだにわだかまりがある。長女は他の姉妹よりも両親と長く暮らしている分だけ、思うところも多いのだ。

姉妹が住む古くて大きな鎌倉の家が、もう一人の主役のように感じる。陽の当たる縁側や庭の梅の木。おばあちゃんが漬けていたという年代物の梅酒や糠床。木造の古い家屋に染み付いた家族の歴史と匂いがもう一人の主役だ。

この家の中で 最初は姉たちに敬語で話していたすずが徐々に心の壁を取り去って溶け込んでゆく姿は本当に見ていてうれしくなる。

三姉妹にはそれぞれに恋人がいる。変わらないようでいて、時とともにすべては変わってゆく。この穏やかな4人の生活も、いつか終わりが来るのかもしれない。そんな未来も想像して、また切なくなった。

監督・脚本=是枝裕和/原作=吉田秋生/出演=綾瀬はるか、長澤まさみ、夏帆、広瀬すず、加瀬亮、鈴木亮平、池田貴史、坂口健太郎、前田旺志郎、キムラ緑子、樹木希林、リリー・フランキー、風吹ジュン、堤真一、大竹しのぶ/2015年、日本

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「海街diary」DVD3800円(本体・税別)、発売元=フジテレビジョン、販売元=ポニーキャニオン