ブリッジ・オブ・スパイ:DVDジャケットの写真

日曜日に観たいこの一本

ブリッジ・オブ・スパイ

実話を映画化したものだという。

米ソの冷戦が激しかった1950年~60年代。ニューヨークで保険専門の弁護士として成功していたジム・ドノヴァン(トム・ハンクス)は、ソ連のスパイ容疑で逮捕された画家、ルドルフ・アベル(マーク・ライランス)の弁護を依頼される。国民が期待しているのはスパイの死刑。そんな空気の中、引き受ければ、自分の将来や家族の身にどんな災難がふりかかるかわからない。妻も当然反対である。こんな誰もやりたがらない仕事を、ジム・ドノヴァンは職責を全うするために引き受ける。

たとえ証拠が足りなくても、スパイは死刑。「ソ連憎し」という国民感情の前では、どんな無理も通る。そのことは、裁判官も検事も分かっていて、裁判は単なる儀式だと思っている。まるで中世の魔女狩りだ。疑われた者はみな死刑をまぬがれない。無茶苦茶である。

ドノヴァンはなんとか死刑だけは回避しようと奮闘する。そんなドノヴァンにCIAの職員が接触してくる。平たく言えば圧力だ。この時のドノヴァンの言葉が印象的だ。概略だがこんなことを言うのである。

「あなたの先祖はドイツ移民でしょう。私はアイルランドだ。そんな国民を結びつけているのはこの国の規則だ。規則をないがしろにすることはできない」。

一方で、ソ連では米空軍のパイロットがスパイ容疑で拘束され、ドノヴァンはスパイ同士の交換という困難な任務を政府から極秘に依頼されることになる。

 

ブリッジ・オブ・スパイの写真

ドノヴァンとアベルは会話を交わすことにより、お互いを尊敬し、信頼を寄せるようになっていく。アベルは死刑になるかもしれない、という身の上でありながら、実に落ち着いた態度を見せる。それが自分の運命であるなら受け入れる、というように。

たとえスパイだったとしても、国家に命令され、その命令を忠実に実行した人間の命を奪うという、個人に対する責任のとらせ方が、果たして正当なのか。アベルは命令に背く選択肢を与えられていたのだろうか。

ドノヴァンがアベルの人柄に信頼と、ある種の友情のようなものを感じ始めたように、見ている私もアベルの無事を祈らずにはいられなかった。

監督・製作=スティーブン・スピルバーグ/出演=トム・ハンクス、マーク・ライランス、エイミー・ライアン、アラン・アルダ/2015年、アメリカ

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「ブリッジ・オブ・スパイ」2枚組ブルーレイ&DVD〔初回生産限定〕、DVD発売中、税別3990円、20世紀フォックス ホームエンターテイメントジャパン