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- カテゴリ: 日曜日に観たいこの一本バックナンバー
- 2017年1月22日(日曜)09:00に公開
- 作者: 戸田 照朗
日曜日に観たいこの一本
拳銃と目玉焼
この欄で紹介する映画を探すにあたり、月に何本かの映画を見る。なるべく私の好みにばかり偏らないように、一般的な評価も加味しながら、作品を探す。時には、あまり気が進まないが、評価が高い作品なので、という理由で見て、紹介することもある。
そうしていると、無性に気の向くままにB級映画などをまとめて見たくなる時が来る。今回紹介する作品は正月休みに動画サイトのhuluで見た。
曰く、「カメラ8万円、ライト750円、平均スタッフ数3・5人…。町のビデオ屋が作ったヒーロー映画の金字塔!? 京都市伏見区で結婚式や幼稚園のビデオ撮影業を営む安田監督が、8万円のカメラと平均3・5人のスタッフで作り上げた関西発ヒーロー映画。気弱で心優しい中年新聞配達員が、惚れたウェイトレスのため徐々にヒーローになっていく様子を関西人らしい人情をからめ笑いと涙で描く。作品中のヒーローは決してスタイリッシュではないが、無様に見返りを求めず七転八倒する姿は、男なら感涙必至のヒロイズムに満ちている!」との解説がついていた。
しかし、驚いた。本当によくできている。素人が作った自主制作作品かと思いきや、最初のカットからカメラワークがなかなか堂に入っている。俳優陣は全員がプロのようで、安心して見ることができる。そして、脚本もよくできていると思う。
キャストが、役にピッタリだと思った。主演の中年新聞配達員・志朗を演じた小野孝弘さんは人のいい純朴な独身中年という感じがピッタリ。そして、志朗が心を寄せるウエイトレス・ユキを演じた沙倉ゆうのさんは、ひたむきで清潔感がある。思わずファンになってしまった。そのほか、脇を固める俳優さんたちも実にいい。
脚本がよくできていると書いたが、実は安田監督はその日に撮影する分の脚本を前日に書いて、毎日撮影が始まる直前にスタッフや俳優に渡していたという。だから、スタッフや演者も、その日どんな撮影になるのか、現場に行くまで分からなかった。
「ヒーロー」が着る衣装や「拳銃」などの小道具も手作りなのかもしれないが、ちゃちな感じは全くしない。
監督のこだわりから、撮り直しや、徹夜の撮影もあったという。そして完成した映像は迫力があり、俳優たちの演技も熱を帯びている。映画製作への情熱を感じる。
この作品は好評を得て、全国の劇場でも公開された。ジャケット写真は、昭和の映画ポスターのようだ。
安田監督が設立した未来映画社は現在、沙倉ゆうのさんを主演にした新作の「ごはん」を劇場公開中。
監督・脚本・撮影・照明・編集=安田淳一/出演=小野孝弘、沙倉ゆうの、矢口恭平、田中弘史、紅萬子、戸田都康、吹上タツヒロ、ゆうき哲也/2014年、日本
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「拳銃と目玉焼」、DVD税別3800円、発売元=未来映画社、販売元=アメイジングD.C.