ベストセラー:DVDジャケットの写真

日曜日に観たいこの一本

ベストセラー 編集者パーキンズに捧ぐ

ヘミングウェイやフィッツジェラルドらベストセラー作家を担当してきた名編集者パーキンズの元に無名の作家トマス・ウルフの原稿が持ち込まれる。一晩で原稿を読んだパーキンズはウルフの才能を見抜き、出版することを決める。ニューヨーク中のどこの出版社に持ち込んでも相手にされなかったウルフは歓喜した。しかし、ウルフの作品はとにかく長すぎるのが欠点。パーキンズは大幅な添削を受け入れることを要求する。宝石の原石を磨くように冗長な個所を削り、より洗練された作品に仕上げた処女作「天使よ故郷を見よ」はベストセラーに。そして、更なる大作に取りかかる二人は昼夜を問わず執筆に没頭。パーキンズは家庭を犠牲にし、ウルフの愛人で売れないウルフを支えてきたアリーンは、二人の関係に嫉妬し胸を焦がす。やがて第二作は完成し、またも大ヒット。その一方で、ウルフはパーキンズ無しでは作品を書けないという悪評に怒り、二人の関係に暗雲が立ちこめる。ウルフは感情のままに動くところがあり、他人への気遣いにかけ、人を傷つけるところがある。

編集者はあくまで黒子であり、名声を得るのは作家。しかし、作品は二人の共同作業でできたように見える。できた作品は誰のものなのか。パーキンズには、作品を変えてしまったのではないか、という葛藤が残る。作家個人の思いよりも、読者が喜ぶものを届けるのが編集者。

 

ベストセラーの写真

時は大恐慌の時代。第二作を書き上げて、ヨーロッパ旅行から帰ってきたウルフを港で迎えたパーキンズ。二人が町を歩くと炊き出しに失業者の長い列ができていた。これを見て、自分の紡いだ物語をこの人たちが買って読むことはないだろうと無力感を口にするウルフ。しかし、不安が広がる時にこそ、人々に物語は必要なのだとパーキンズは諭す。

編集者と作家という関係を超えて、二人は親子のようだ。この作品は実話に基づいており、ウルフは37歳の若さで夭折したという。

原題は「GENIUS」(天才)。二人の天才の物語である。

パーキンズ役にコリン・ファース。ウルフ役にジュード・ロウ。アリーン役にニコール・キッドマン。パーキンズの妻をローラ・リニーが演じている。名優の演技に安定感を感じる。

監督=マイケル・グランデージ/出演=コリン・ファース、ジュード・ロウ、ニコール・キッドマン、ローラ・リニー/2015年、イギリス

…………………

「ベストセラー 編集者パーキンズに捧ぐ」、DVD税別3800円、発売元・販売元=株式会社KADOKAWA