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- カテゴリ: 日曜日に観たいこの一本バックナンバー
- 2017年6月25日(日曜)09:00に公開
- 作者: 戸田 照朗
日曜日に観たいこの一本
PK ピーケイ
留学先で悲しい失恋を経験し、今は母国インドでテレビレポーターをするジャグーは、ある日地下鉄で黄色いヘルメットを被り、大きなラジカセを持ち、あらゆる宗教の飾りをつけてチラシを配る奇妙な男を見かける。チラシには「神さまが行方不明」の文字。ネタになると踏んだジャグーは、「PK」と呼ばれるその男を取材することに。「この男はいったい何者? なぜ神様を捜しているの?」。しかし、彼女がPKから聞いた話は、にわかには信じられないものだった。驚くほど世間の常識が一切通用しないPKの純粋な問いかけは、やがて大きな論争を巻き起こし始める。
作品の最初の方に出てくるので、書いてもネタバレにはならないと思うが、PKは宇宙人で、地球についた時に、砂漠で男に宇宙船との通信装置を奪われてしまったのだ。その装置がないと自分の星に帰ることができないため、地球語(インドの言葉)を覚えたPKは、人々に装置のありかを聞いて回る。警官に聞いたところ「私は人間だから分からない。神様に聞いてくれ」と言われた。「そうか。神様に聞けばいいのか」と思ったPKだったが、インドには様々な神様がいる。ヒンドゥー教をはじめ、仏教、キリスト教、イスラム教…。PKはありとあらゆる宗教に入信してみて、熱心に修行し、装置を見つけ出そうとするが、いっこうに見つからない。しかも、それぞれの宗教で言う事が違う。混乱し、途方にくれたPKは「神さまが行方不明」というチラシを作って配るようになったのだ。
この映画は、ある特定の宗教を批判するものではないが、「宗教とはいったいなんだろう」という問いかけが底にあるのは確かだ。劇中には、(おそらく架空の)ある教団が登場して、その教祖とPKが対峙することになる。相棒となるジャグーの家はこの教団の信徒で、ジャグーの人生も教祖の言葉で歪められた。どこか、カルトのような雰囲気があり、インチキ臭く、金の匂いがプンプンする。結局、教祖の言葉は人々の不安をあおり、恐怖によって心を支配しようとしているように見える。本当にこの人物が「神様」の仲介者なのか。PKの純粋な疑問が、教祖のメッキを次々にはいでゆく。
コメディタッチで描かれ、インド映画につきものの歌と踊りも登場する。しかし、なかなか奥が深い。
「イスラム国」が「神のため」といいながらジャーナリストの命を奪い、自爆テロで無辜(むこ)の市民を殺戮(さつりく)する。アメリカのトランプ大統領はイスラム教徒を差別し、入国を制限しようとする。そして、欧米は「イスラム国」掃討作戦の空爆で、一般市民を巻き込んでいる。
宗教ってなんだろう。神様っているのかな。PKでなくても、問いたくなる現実がそこにある。
監督=ラージクマール・ヒラニ/出演=アーミル・カーン、アヌシュカ・シャルマ、スシャント・シン・ラージプート、サンジャイ・ダット/2014年、インド
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