ひまわりと子犬の7日間:DVDジャケットの写真

日曜日に観たいこの一本

ひまわりと子犬の7日間

 6月の「本よみ松よみ堂」で紹介した「犬を殺すのは誰か ペット流通の闇」(太田匡彦)や「殺処分ゼロ 先駆者・熊本市動物愛護センターの軌跡」(藤崎童士)に書かれていた保健所(動物愛護センター)職員の思いにも通じる作品。

 主人公の神崎彰司(堺雅人)は夢がかなって動物園の飼育係になったが、動物園が閉園。職場で知り合った妻との間には2人の子どもを授かったが、妻は若くして交通事故で他界し、今は実家から、次の職場である宮崎の保健所に通っていた。

 保健所での神崎の仕事は、犬猫の収容と管理、そして殺処分だ。タイトルにある「7日間」というのは収容された犬猫の命の期限だ。7日を過ぎれば殺処分となる。

 動物が大好きで飼育係になった神崎。しかし、今はその命を奪う仕事をしている。神崎は里親が見つかりそうな犬については、上司の目を盗んで期間を延長し、度々忠告を受けている。しかし、力及ばず殺処分を行う時は自らの手でガス室のボタンを押す。手に残る冷たい感触を引き受ける。

 家には里親が見つからず引き取った犬たちがいる。娘も犬が大好きだ。しかし、小学生になった娘が、父親の仕事に疑問を持ち始めた。いつかちゃんと話さなくてはならないと思ってはいたが、つい先延ばしにしてきた。どう娘に説明したらいいのかと悩む神崎。事実を知れば、二度と口をきいてもらえないかもしれない。娘は神崎の仕事は犬を助けることだと信じているのだ。

 そんな時、山で捕獲された野良犬の親子が保健所に収容された。親犬は、老夫婦に子犬の頃から可愛がられていたのだが、不幸な出来事が重なり、野良犬となって、すっかり人間不信になっていた。職員を見れば牙をむく犬を見れば、里親探しは絶望的に思える。しかし、神崎はなんとかこの親子を救おうとするのだった…。

 お涙頂戴の動物映画はあまたあるが、この作品は一線を画する。年間に17万頭も殺処分されている現実と、そこに働く職員の気持ちを真正面から捉えた作品というのは初めてではないだろうか。

 神崎を演じるのは「半沢直樹」の大ヒットで今をときめく堺雅人。舞台となる宮崎は堺の出身地だという。その友人でもあり、よき理解者でもある女性獣医師を中谷美紀が演じている。ドラマとしても見ごたえのある作品となっている。

 

  監督・脚本=平松恵美子/原案=山下由美「奇跡の母子犬」/出演=堺雅人、中谷美紀、でんでん、若林正恭(オードリー)、吉行和子/2013年、日本