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- カテゴリ: 日曜日に観たいこの一本バックナンバー
- 2014年7月27日(日曜)09:00に公開
- 作者: 戸田 照朗
日曜日に観たいこの一本
42 世界を変えた男
4月15日はジャッキー・ロビンソンデーで、希望する全選手が背番号42をつけてプレーする。4月15日はジャッキー・ロビンソンがメジャーデビューした日で、デビュー50周年の1997年にその偉業をたたえて、42番が全球団で永久欠番となった。
ロビンソンは他の黒人家庭と同じように貧しい家庭に育ったが、大学(UCLA)に進学。野球だけでなくフットボールや陸上でも活躍した。第二次大戦では従軍し、将校となっている。バスの運転手から黒人だからと言う理由で後ろの席に行くように言われ、これを拒否したために憲兵を呼ばれ、軍法会議にかけられたが、無罪となった。
南北戦争で奴隷制度に反対した北軍が勝利した後もアメリカでの黒人差別は根強く残り、特に南部の州ではジム・クロウ法が制定されて人種隔離政策が半ば合法化されていた。
この映画は、第二次大戦が終わった1945年から始まる。ロビンソンはニグロリーグ(黒人リーグ)の選手だったが、メジャーの名門ブルックリン・ドジャーズのブランチ・リッキー会長に誘われ、傘下のAAAモントリオール・ロイヤルズに入団する。入団に際し、リッキーがロビンソンに言ったことは「紳士であること。やり返さない勇気を持つこと」。予想されたこととはいえ、ロビンソンとのプレーを嫌い、トレードを希望する者が出たり、球場では白人の観客から罵声浴びせられた。しかし、ロビンソンは努めて平静を保ち、好成績でこれに応えていく。そして、何よりロビンソンの活躍は黒人たちの希望だった。
時に折れそうになるロビンソンを支える人々が凛としていて実にいい。妻のレイチェルとは大学時代に知り合い、ドジャース入団を期に結婚した。知的で、差別に屈しない芯の強さを持っている。ロビンソン夫妻の身の回りの世話もする黒人記者スミスもメディアという世界で差別と闘っている。
なかでも魅力的に描かれているのがハリソン・フォード演じるリッキー会長だ。様々な困難を乗り越えてロビンソンを支援する理由はなんなのか。ロビンソンの、どうして? の疑問にリッキーは「金(米ドル札)の色は白でも黒でもなく緑だ」とビジネスマンらしいことを言うが、本当にそれだけだったのか。
黒人選手や中南米の選手が当たり前に活躍する今のメジャーリーグを見ていると信じられない思いがする。昨年、日本人メジャーリーガーの道を開いた野茂英雄選手の野球殿堂入りが検討されたが、ダルビッシュや田中将大選手の活躍を見られるのも野茂というパイオニアがいてこそ。道が開かれた後の風景とはこんなものなのかもしれない。
監督=ブライアン・ヘルゲランド/出演=チャドウィック・ボーズマン、ハリソン・フォード、ニコール・ベハーリー、クリストファー・メローニ、アンドレ・ホランド、ルーカス・ブラック、ハミッシュ・リンクレイター/2013年、アメリカ
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